絶対王子は、ご機嫌ななめ

「おーい、柚子ジャム。早くこっち来い」

柚子ジャム……。

やっぱりジャムは決定なんだ。でもそのアダ名で呼ぶのは、人がいないところでだけでお願いしたい。

智之さんが『ご愁傷様』と言いたげな顔をして私を見ているのに気づき、はあ~とため息をつくと政宗さんの元へと向かった。

さっきソファーから声しか聞こえなかったのは、政宗さんがそこに寝転んでいたから。足を肘掛けに乗せているのはあまり行儀のいいことではないけれど、スラっとした長い足を持て余すように寝転んでいるさまは、やっぱりカッコいい。

そんな政宗さんにボーッと見惚れていると、眉間にシワを寄せた彼が怪訝な声を出した。

「何ジロジロ見てんだよ、気持ち悪いだろ。さっさとコーヒー淹れてこい」

「は、はい!?」

コーヒーって、すぐそこにあるじゃない。しかも人の顔見て気持ち悪いって何? そりゃ大した顔じゃないけれど、言って良いことと悪いことがあるでしょ?

人のこと勝手に呼び出しておいて召使いみたいな扱いは、絶対に納得いかないんだから!!

「コーヒーなら、そこにありますけど?」

「知ってる」

「じゃあ、ご自分でどうぞ」

「へぇ~、命の恩人にそんな態度でいいわけ?」

政宗さんはそう言いムクッと起き上がると、口角を上げてニヤリと笑ってみせた。

何なんだ、この態度。

命の恩人?

確かに昨日、インロックしてしまった車の鍵を開けるために力を貸してくれたのは政宗さん、あなただけど。実際に開けてくれたのは智之さんで、命の恩人と自分で言い切ってしまうのはどうかと思うのは私だけ?

やっぱり納得いかなくて、政宗さんを睨みつけた。



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