絶対王子は、ご機嫌ななめ

『柚子、おまえだからキスしたんだ。俺の気持ち、わかってるだろ?』
『え?』
『おまえは俺のものだ。誰にも絶対に渡さない。柚子、愛してる』
『政宗さん……』

「私も……」

「は?」

しまった!! 妄想に声で答えるなんて、なにしてるの私!! 慌てて目線をそらすと、正面を向く。

バレてない? バレてないよね?

政宗さんが変なことを言うから、頭がプチパニックを起こしちゃったじゃない! いきなり動揺させるようなことを言うのは、勘弁して欲しい。

「ホント、面白いやつ」

すっと伸びてきた手が、私の髪をクシャッと撫でる。

何? 妄想してたのバレてる? それとも、挙動不審な動きが面白い?

まあ今さらそんなの、どっちでもいいけれど。

「家まで送る。道案内して」

「……はい」

キスしたっていうのに、政宗さんはいつもと変わらず淡々としていて。運転する横顔を窺い見ても、やっぱり顔は仏頂面のまま。

こんなこと日常茶飯事で、慣れてるのかな? 

でもね、私のファーストキスを奪ったんだよ? 政宗さん、その辺りはどう思ってるの?

聞きたいことは山ほどあるのに、どれひとつ聞くことができなくて。もどかしい気持ちだけが、どんどん膨らんでいく。

「なあ」

前を向いて運転したまま、政宗さんがぼそっと呟いた。


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