絶対王子は、ご機嫌ななめ
「柚子。今の人は、あんたの彼氏?」
はあ……やっぱり勘違いしてる。もしそうだったら、いっつか紹介してるわよ!しかも、そんな嬉しそうな顔しちゃって。
『もしあの人が娘と結婚したら、私にもあんな素敵な息子ができるのね』
なんて思っちゃってるんじゃないの?
「息子なんかできないからね!」
「はあ? あんた何言ってるの?」
「もう知らない! とにかく政宗さんは彼氏じゃないから!!」
力任せに門を開けると、急いで家へと入る。そのまま階段を駆け上がり、自分の部屋へと飛び込んだ。
「はぁ……」
一気に体の力が抜けて、床の上へとへたり込む。
「キス、しちゃった……」
政宗さんとの初めてのキス。本当は嬉しいはずなのに、素直に喜べない。かなり複雑な気持ち。
政宗さんのことは好き。だからキスされたことは素直に嬉しい。でも私がどうしてキスしたのかを聞いた後の、『さあ、どうしてだろうな。強いて言えば、したかったから?』の言葉がどうしても引っかかる。
『誰にでもするわけ無いだろ』とも言ってたけど、今考えてみればなんだか上手くかわされただけ?って感じもしなくもない。普段の召使いの延長で、遊ばれてるだけかも……なんて思ってしまう。
はぁ~。考えれば考えるほど、深みにはまっていきそう。どんどん気分が滅入っていく。
「あ~もう、やめやめ!」
こんな時は音楽を聴くに限る!! 音楽プレーヤーの電源を入れると、そこから流れてきたのは切ないラブソング。大好きな曲なのに、今の私には酷なもので。
音楽プレーヤーの電源を切るとベッドに這い上がり、布団を被って目をギュッと瞑った。
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