絶対王子は、ご機嫌ななめ

矢部さんのその一言で、智之さんが教えてくれた『昔は笑顔が素敵な“スマイル王子” なんて呼ばれて大人気だったんだよ』という言葉を思い出す。

大好きな政宗さんのことだから、本音を言えば知りたい。どうして人を避けるようになってしまったのか、普段は笑顔を見せなくなってしまったのか。

でも矢部さんから聞くのは気が引ける。

この人、絶対に本当のこと話してくれそうもないし……。

どう返事をしようか迷っていると、矢部さんが何かを見透かすような嫌な笑いを顔に浮かべた。

「知りたいけど、俺からは聞きたくないってとこか。まあいい。そんなに気になるなら調べてみろよ。今はネットで、なんでも簡単に調べれるからな」

矢部さんはそう言うと、ショルダーバックから何かを取り出し私へと差し出した。

「これは?」

「曽木のことが載ってる月刊誌。昔のだけど、良かったらどうぞ」

かなり古いものなのか、読み込んだのか。それはボロボロになっていて。政宗さんのことが載っていると思うと読んでみたい気もするけれど、この人から受け取っていいものか。

受け取るのを渋っていると、「チッ」と舌打ちした矢部さんが、私の胸に雑誌を無理やり押しつけた。

「え? あ、あの……」

「じゃあまた、近いうちに」

私の言葉を最後まで聞かないうちに、矢部さんはさっさと帰ってしまった。

ホント、勝手な人。

私はボロボロの雑誌を両手で持つと、パラパラとめくり始めた。



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