絶対王子は、ご機嫌ななめ

でも……。

足を一歩踏み出す前に、まるで手錠でも掛けられたように右手首をカチッと掴まれる。

「おまえは“おとなしくしろ”の意味を知らないのか?」

「そ、そんなこと知ってますよ!!」

ここが複合施設の大型駐車場だということも忘れて、つい大声を出してしまう。

店内と結ばれている連絡通路から出てきたお客さんが、何事かとこっちを伺っていた。

もう、どうしてこうなっちゃうの……。

この場を取り繕うように笑顔を作ると、政宗さんに近づく。

「いいですか、政宗さん。ここは職場じゃないんですから、私が何でも言うこと聞くと思ったら大間違いですよ」

他人には聞こえないように小さな声で、でも自分の気持ちは目一杯込めてそう言うと、背の高い政宗さんを精一杯睨みつけた。

でも政宗さんに私の睨みなんて効くはずもなくて、頭の上にポンと手を乗せられると思わぬ笑顔を見せられた。

「俺の家で面倒を見るのは、命令でも何でもない。俺がそうしたいからするんだ。だから黙ってついてこい」

政宗さんの笑顔は私を“うん”と頷かせるのに十分すぎるほど十分で、掴まれている手を引かれると足は素直に動き出してしまった。



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