熊と狩人


熊は一瞬ひるんだ顔をしたが、すぐにまた憎悪に満ちた目つきで狩人をにらみつけた。


「おまえにおれを責める権利があるのか?」


狩人は眉間にしわをよせた。


「そうだな。そのとおりだ」つぶやきながら、猟銃をかまえる。「でも、おれはあんたを許すことはできない」


銃口を熊に向けた。引き金に指をかける。


「一発でやってくれよ」


そう言って熊は目をとじた。


十秒ほどの間があった。


狩人は、引き金をひくことができなかった。


「ちくしょう」


狩人は、檻の鉄格子を思いきり蹴った。派手な音がひびきわたり、埃が舞う。


熊は目をひらいて、ため息をついた。


「またか」


「くそ、なんでこんなことになっちまったんだ。おれと、あんたが、なんで」


狩人は頭をかかえて、押し殺したうめき声をあげた。


熊は、何も答えなかった。




< 3 / 20 >

この作品をシェア

pagetop