愛しいカタチの抱きしめかた

/2ー3・曇天の

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2ー3・曇天の
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「あ~あ。嫌だな……」


プリントを重ねていきながら大きな溜め息をつく。


誰もいない教室。部活以外の子たちも、手伝わされると思ったのか早々に帰ってしまった。


机を六つ横に並べて、ひとつの机に一種類、計五種類のプリントたちを順に重ねて渡す。


「……はい」


少し間違い。わたしともうひとり以外誰もいない教室。


「ああ。仕方ないね。今日はボクたちが日直で、しかもふたりはクラス委員」


「部活行けないし、間宮くんだし」


「何? この前泣いてしまったことを気にしているのだとしたら……」


「それは全く。それに、あれは間宮くんが考えてるようなものじゃないから」


「って、日紫喜はちゃんと言っていただろう」


言葉の端々に含むものも感じるけど。


「そうだけど……言いふらさないでくれてありがとう。あと、本当に百瀬のことじゃないから」


自分のしてたことに対して何かが起こっても、それは可能な限り受け止めたいと思う。けど、回避できるならそれは大歓迎。


知らない人たちに噂されるのは、やっぱり気持ちのいいものじゃない。でも非難もできない。実際わたしが逆の立場だとしても、耳を傾けないとは限らない。

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