愛しいカタチの抱きしめかた

/1ー5・秋深き、わたしの日常

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1ー5・秋深き、わたしの日常
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制服が冬服に変わった。


プールは防火対策としてだけの役割を与えられ、日増しにその色は透明度を欠いていく。


放課後、バス停に添うように立っている大木が紅葉真っ盛りだということに気づく。木の名前がどうしても思い出せず、わたしはその場で記憶を辿った。


「えっ!? みーちゃん、こんなポピュラーな木の名前も知らないのっ?」


「思い出せないだけですけど? ……小夜なら優しく教えてくれるのに」


「それは残念だ。大輔も一緒に、水泳部の用みたいだよ。一緒に帰れなくて本当に残念だね。僕もとてもとても同感だよ」


棒読みの見本みたいな百瀬の台詞に、わたしは突っ込むことが出来ずスルーをする。理由なんて明白だからだ。


……明白だと思ってしまい反省する。事実そうなのかもしれないけど、大いに図に乗りすぎだ、わたしは。


「帰ったら図鑑で木の名前を教えてあげよう。僕の家寄っていきなよ。それとも、着替えてから来る?」


「すでに行くってことになってるんだけど……」


「ケーキもあるよ?」


「いつもいつも甘味で釣らないでよっ!!」


確かに甘いものは大好きだけど。気がつくと、百瀬にはいつも飴やらチョコやらを口に放り込まれてはいるけど。


そして、百瀬はいたずらっ子のような、大人びた策略者のようにも見える笑みで、わたしのほうに首を傾げた。


「――じゃあ、ケーキなしでも、釣られてくれる?」


「っ!!」


「照れてくれてるの? 顔、赤くなってくれるんだ。嬉しい」


「…………」


果たして、わたしは本当に顔を赤らめたのかは分からない。百瀬には、絶対に、聞けない……。

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