今日も君に翻弄される。
「絶対に早まらないでね」

『早まるも何も、起きたばっかりだよ?』

「何があっても早まらないで」


うん……? と良く分かっていない葵。

僕は尚更分からない。


準備をするというので、一旦電話を切った。


見計らってもう一度電話をかける。


「葵」

『おはよう、和泉くん。

(普段通り学校に行くだけなんだけど……。学校に行くの待っててほしいのかな。一緒に登校なんて、したことないけどなあ)』


葵はのほほんと話しているけど、安心はできない。


叩きつけるように制止した僕の声が、かなりの緊張感を放っているのは否めなかった。


『どうしたの?』

「……どうしたもこうしたもない」


僕は苛立っていた。

怒っていた。


僕の寝起きは機嫌が悪いけど、今はそれに輪を掛けて悪かった。


「今どこ」

『バス停だよ。あ、バス来たから一旦切るね?』

「ちょっと、あお、」


いくら耳を澄ましても、葵の声は聞こえない。


ツー、ツー、と無機質な機械音が返事を寄越した。


本当に切った……!


何てことだ。


了承を得る前にあっさり切った葵に驚愕する。


仕方がないので電話は諦めて、メールを送った。
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