今日も君に翻弄される。
「好き嫌いとかないの」

「ないよ。お菓子って美味しいもん」


嫌うよりむしろ目移りするよね、うん。


甘いものは正義。甘くて可愛いともっと正義。


わたしの持論を理解しがたそうに考え込んだ和泉くんは、ゆっくりと目を伏せた。


「じゃあ、特に好きなものはないの」


どれも好きだから一番なんて決められないよ、とか言うと怒られるのは目に見えている。


ちゃんと真剣に検討してみた。


大丈夫。優柔不断じゃないから、わたし。


「飴はね」

「うん」


あめさんはよく食べるから、まだ食べてないやつ、という基準で選ぶと、必然的に市場調査ができる。


もちろん、季節限定なんてものもあるわけで。


特に、って話だから、多分いつでも食べられるやつを挙げれば問題ないよね。


元気なときも疲れたときもよく食べるあめは、といえば。


「特大特濃ミルクっていうあめがね、甘くておっきくて美味しいんだよ、って和泉くん!」

「何」

「どうしたの、まだハロウィンじゃないよ!」

「(ハロウィンは貰う気満々なのか……)」


和泉くんが需要のない話を聞くなんて珍しい、というか初じゃないだろうか。


……もしかして、体内時計でも狂ったのかなあ。


大丈夫かな。
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