今日も君に翻弄される。
「うわーん永久保存するー!」


あまりの喜びにそんなことを叫ぶと、ぎょっとした和泉くんが怖い声を出した。


「いや食べて。賞味期限という限界が来る前に絶対食べて」

「じゃあ一個だけ食べてあとは防腐するー! 家宝だー!」

「(家宝!?)」


豪快に開けた鞄から同じ包みを取り出した和泉くんが、手早く包装を取った。


「葵」

「な、にっ、……!?」


手首を引かれて、珍しい行動に阿呆のように口を開けて固まってしまい。


ぴし、と弾かれた飴は、和泉くんの指先から要領よくわたしの口に収まる。


大好きな甘さが口内に広まった。


「あの……?」


状況が飲み込めず、舌先で飴を転がしながら、ぽかんとしているわたし。


横目でわたしを見て、袋を片付けつつ、和泉くんが説明してくれた。


「それは入るだけ詰めたんだ。まだ残りはあるから、葵が食べてくれないと消費しきれない」

「でもいつかなくなっちゃうし、」

「そうしたらまた買うから」

「でも証拠が欲しいんだよ……!」


和泉くんはぐずるわたしを、葵、と優しく呼んだ。


「家宝にしてくれるなら、ちゃんと食べ物以外を贈るし」

「……うん」

「大好きなんて、何度でも言うから」


証拠なんか残さなくてもいいくらい、言うから。


「食べて」


ね? と、どこまでも優しく笑って、和泉くんはわたしの頭をなでた。
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