今日も君に翻弄される。
「葵」

「うっ、うん」

「お兄ちゃんは駄目」

「餌づけだからですか……!」


涙目のわたしにうろん気な視線をくれる。


「違うよ」


というか餌づけって何、とか何とか言っているけど。


わたしにとって重要なのは、呟きを真剣に否定してくれたことだ。


「……家族だと葵と付き合えないでしょ」

「いず」

「もう一回はなしね」


それと、馬鹿なことを考える前に、少しは僕を信用してね。


「まあ、……そういうところも可愛いけど」


照れ隠しのように横を向くから、つい。


「和泉くん」

「…何」


あのね、


「大好き」


笑ったわたしを流し見て、


「…………そう」


少し、和泉くんも笑った。
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