今日も君に翻弄される。
大人びた少し冷たそうな容姿と冷たい口調で勘違いされることが多いけど、和泉くんは決して不用意に発言しない人だ。


和泉くんは理由もなしに断らない。


冷たい無表情から不機嫌が標準装備に見えるけど、実質そうではなくて、不機嫌なときは何か不機嫌になる理由がある。


断るときは何か断る理由がある。


理由も含めた丁寧な説明をしてくれる和泉くんなのに、補足がないのは珍しい。


むむう、と不満を表情にのせれば、ちらりと和泉くんが流し目でこちらを見遣った。


和泉くんはすらりと伸びた細身の長身。


平均くらいのわたしの身長では、どうしても、わずかに見下ろされている感が否めなくてほんの少し怖いけど、こういう顔のときは怒っていない。


できるだけ丁寧に、無意識下ではしょらないように。

わたしがきちんと納得できるように。


大抵、分かりやすく話すための準備を整えてくれているときの顔だ。


和泉くんのこういうさりげなさが、好きだなあと、実感する。
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