名前を教えてあげる。
自分でもわかっていた。

育児という枷が外れた今。

妊娠をきっかけに失ってしまった『自由』を切望していることに。




うとうとしかけた時。

掛け布団がふっと持ち上がり、背中がひんやりとした。


反射的に美緒は眉を顰めた。

順が美緒の布団に潜り込み、美緒の髪を避けて首筋に何度もキスをし始める。


「美緒、愛してるよ……」


ライブに行って疲れたんだけど……

心の中で思ったが、生理でもない限り拒否なんかしたことはない。
順はなんの疑いもなく、美緒が女友達と遊んでいると思い込んでいる。

それを利用していることに申し訳ない、という気持ちもあった。


「私も順のこと愛してる…」


美緒は寝返りをうち、順の首に両腕を廻した。

恵理奈がいない今、何にも気を使う必要はない。様々な体位をとり、大きな声を出して交わった。
順は、飢えた犬のように美緒の身体を貪った。


余韻の残る部屋。

(もう、午前1時を過ぎたかな…)


美緒は布団の中でぼんやり考える。

欲望が満たれた途端、隣で横たわる順がそわそわとし始めた。

元々夜型の順は、この時間帯がもっとも集中出来る。
(その為に夜10時から11時まで仮眠を取るのが習慣にしていた)









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