名前を教えてあげる。



[みおです♪今日のスケジュールはスーパーとドラッグストア^o^
トイレットペーパーきらしてるから、絶対買わなきゃ]


風貌に似合わず、まめな哲平はこんなくだらないメールにも必ず返信をくれた。


美緒が買い物カゴを抱えて、商品を選んでいると、携帯がEXILEのメロディを奏でる。


[トイレットペーパー大事だね。ちゃんと買った?]


メールの中の哲平は、剽軽だ。
美緒はくすっと笑う。

美緒の携帯は、教習の区切り時間ごとに送られる哲平からの短いメールを一日に何度も受信した。




ライブから10日後、哲平の休みの日に再び逢う約束をした。


朝、順はスニーカーを履いたあと「今日も帰りは遅くなるよ」と言って出掛けていった。


この頃、順の帰宅は連日午後7時を過ぎていた。予備校で自習をしているんだ、という。

具体的に何をしているのか、美緒には分からない。


同じ家に住まいながら、別世界に住んでいるような日々。


だけれど、美緒に不満はなかった。

確かに、砂の中に穴を掘るような日々だったけれど、哲平はその中で掘り当てた湧き水のようだった。




< 258 / 459 >

この作品をシェア

pagetop