名前を教えてあげる。
田中みどりとの再会


5年ぶりに再会した田中みどりは、随分と痩せてしまっていた。


ボブだった髪をベリーショートにし、痩けた頬で、オレンジジュースのストローを咥える彼女は、あの『ひでりちゃん』とは別人だった。


「あんたが家出した後ねえ……
本当大騒ぎだったんだよ。
思い詰めて自殺するんじゃないかって、もう皆、真っ青。

警察に捜索願い出そうとしてたら、中里さんから連絡があって。向こうの代理人さんが出てきて、あんたのことは中里家に預かってもらう形で落ち着いたのよ。

でも、私は居心地悪い、悪い〜
一応、あんたのケア役だったから、私が至らないせいで、こんなことになったんじゃないかって、いう人いたわけ……
本当、肩身狭かったわ」


ずずず…とみどりは音を立てて、グラスの液体を啜った。


「ごめんね…みどりちゃんは一生懸命やってくれたのに……でも、あの時はああするしかなくて…」


みどりの正面で、美緒は頭を下げた。


国立大学教育学部卒という誇らしい経歴と心理カウンセラーの資格を持つみどりだけれど、どこかコミカルな容姿のせいか三田村学園の女子児童達には、ちゃん付けで呼ばれていた。

親しみ半分揶揄半分という感じで。






< 287 / 459 >

この作品をシェア

pagetop