名前を教えてあげる。


「はい、どうぞ!」


男から受け取った名刺には、胡散臭いカタカナの社名がプリントされていた。


「はあ……知らないけど」


でも、美緒はそれを突き返したりはしなかった。しげしげと白い紙片を見つめる。


ーーナンパなんかじゃない…
これって、モデルか何かにスカウトされたんだ…!

胸がドキドキしてきた。


ふうん、と興味なさげを装う美緒の胸のうちを見透かすように男は畳み掛けた。


「うちの事務所はね、主に雑誌やCMやってるんだ。
時間はそんなに取らないし、いいバイトになるよ。

本気に女優やアイドルを目指す子なら、全面全力猛プッシュで応援するしねえ。
ほら、あの○○○子ーー
知ってるよね?」


男は、最近人気上昇中のバラドルの名をあげた。

胸がやたら大きいのと、あけすけな男性遍歴を自慢げに語るその女に美緒はあまり好感を持てなかったが、CMやドラマに頻繁に出てくる。


「彼女も最初うちに所属しててね。
うちの社長の紹介で大きな事務所に移ったの。

うちはさあ、利益重視じゃないから。
わいわい皆で楽しくやっていこうよ、みたいなサークル的ノリ!

君、今も可愛いけど、もっと可愛くなれるよ。
女の子って人に見られると、どんどんキレイになるじゃない。俺はそういうコ、何人も見てるから。○○○子なんてメじゃない………あ」


急に何かを思い出したように、男は饒舌な語りをやめた。

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