名前を教えてあげる。
24歳の秋⑷・光太郎の浮気疑惑


「えっ、そうなんだ、残っ念〜!
でもお、それって、大丈夫かあ?」


子供の無邪気な声が飛び交う室内遊園地のカフェで、白河紀香はパンケーキの欠片を放り込んだ口に手を当てて、大きな声を出した。


クリアビーズをちりばめたネイルをした紀香は、フォークやスプーンを摘むように持って食事をする。


「ごめんねえ、借金の返済期限が迫ってて。もう来週、国分村にいかないとまじぃんだわ」


美緒は、冷えてしなったフライドポテトを大きな前歯で噛みちぎったーーー初めて光太郎と食事をした時、美緒のその食べ方を『リスみたいで可愛い』と光太郎は嬉しそうに言ったーーー


来週金曜の夜、紀香のアパートの部屋にお泊まりして、やるはずだった2人だけの女子会。

子供達は、紀香が録画しておいた『電脳戦士サクレンジャー』の映画ビデオを見せて大人しくさせるつもりだった。


恵理奈は女の子なのに、目の大きな愛らしいヒロインが出てくるアニメより戦隊ものが好きだ。だから、白河兄弟とはとても気が合う。


本当は二週間前にやる予定だったのに、紀香の長男、龍亜(りゅうあ)が風邪を引いて延び延びになっていたから、紀香はとても残念がった。








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