名前を教えてあげる。


ホストファミリーとメジャーリーグ観戦に行ったことや、向こうの学生に混じって近代的な公立病院を見学したこと。


[Mr.monky island]

そんなハンドルネームの順のブログでも、シアトルの風景やそこでの生活を満喫している様子が見て取れた。


携帯の画面でそれを読む美緒は、少し淋しい気持ちになる。
眩し過ぎた。何不自由なく、青春を思う存分、謳歌する順が。

まるで、別世界に住んでるみたいだ、と。


けれど、昨日、3日ぶりに更新されたブログには、
[シアトルはとても楽しかったけれど、早く日本に帰りたい。
カニミソの寿司が食いたい。
彼女に逢いたい…]と書いてあって、美緒は嬉しさのあまり、通学バスの中できゃあ!と1人で叫んでしまった。


夏休みが始まれば、順はアルバイトを大幅にセーブして、塾の夏期講習に通う。
大学受験の大事な時期だから、そうそう美緒と遊んでいるわけにもいかない。


それでも息抜きとして、ラブホテルに行くことと、三浦海岸への海水浴を計画していた。


順は医学部志望だった。

付き合い始めた頃、順が美緒に話してくれた。まだ、身体の関係がなかった時。


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