恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―


「ふ…ぁ……」

入り込んできた舌が執拗に咥内を撫でるから、さっきまで繋がっていた身体がすぐに熱を持ち始める。
キスをしながら身体を入れ替えた由宇が、私を組み敷きながら何度も角度を変えてキスを繰り返す。

由宇の身体にも熱がこもっているように感じた。
体勢を変えたせいか、ベッドが小さく軋んだ。

またするの、と唇を合わせながら聞くと、由宇は妖美に微笑んでその顔に胸が跳ねる。
意地悪な笑みはいつも通りなのに、こういう時浮かべる由宇のそれは艶っぽくて女の私でもドキッとしてしまう。

多分、こんな微笑みを浮かべられたら堕ちない女はいないんじゃないかってくらいにキレイで色っぽくて……ぞくっとするほどやらしい。

「梓織が余計な事考えなくなるまでするつもりだけど」
「余計な事?」
「そ。おまえ毎年春先んなると余計な事考えるから」

由宇が言う意味が分かって思わず黙る。
春先……つまり、中学受験を失敗してお母さんが出て行った時期だ。

春先にいつもそんな事ばかりを考えているわけではないけれど、確かに考え込む事も多いから由宇はそれに気づいていたのかもしれない。


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