恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―



中学一年の半分をうつ状態で過ごした私は、これといって仲のいい友達ができなかった。
当然だ。自分から話しかけたりできない状態だったのだから。

話しかけられても、きちんと反応する事もできていなかったと思う。

だんだんと孤立していってしまって、学校で話しかけてくれるのは由宇だけになっていった。
それでも寂しいだとか何も感じなかった私はきっと、まだお母さんに捨てられたショックから抜け出せずに異常な精神状態だったのかもしれない。

それでも、いつも傍にいてくれる由宇に徐々に心を許し始めていって、由宇相手には笑ったりできるようになった頃。
美里ちゃんに話しかけられた。

これといって特別な会話じゃなかったと思う。記憶にも残っていないくらいの日常会話。
だけど、それが嬉しかった。

それを嬉しいと感じるくらいに、私の気持ちは回復していて、そんな気持ちの変化に由宇もお父さんも喜んでくれたのをよく覚えてる。

美里ちゃんは、その日をきっかけに私と仲良くしてくれるようになって、家を行き来するくらいの仲になった。


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