恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―



広兼さんが根性で仕上げた相続の書類に午後一番に取りかかったけれど、分からない部分が少しあってそれを教わりながら確認作業をしていたら、結構時間がかかってしまって。

それでも、隣で手こずる私を見ていた広兼さんが、午後の私の仕事をいつの間にか半分終わらせてくれていたからなんとか定時を一時間過ぎた頃には課を出る事ができた。

本当に姫川は手が遅いよねーなんて文句は何度も飛んできていたけれど、厳しいながらも本当は優しい先輩に恵まれた事を感謝しつつエレベーターホールでボタンを押す。

携帯を見ると由宇からメールが届いていて、内容は会社から徒歩3分くらいの場所にある書店で待っているって事だった。

携帯を鞄にしまって間もなくしてエレベーターがつく。
上から下りてきたエレベーターには若い男性社員がひとり乗っていたから、会釈だけして奥の方に乗り込んだ。

預金管理課があるのは6階で、それより上にあるのは人事課だとか監査課だとかで、あまり一般の社員は行かない場所だ。
確か人事課は50代の人がほとんどだって聞いた事があるから、じゃあこの人は監査課なんだろうか。
監査課と言えば、支店を回って、その支店が一年の中でこなした書類を細かくチェックする場所だ。

つまり、私が午後必死に仕上げた相続関係の書類よりも複雑なものを毎日いくつもチェックするって事で。
考えただけでクラクラする。本当に毎日お疲れ様です、と声をかけたくなる。


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