生贄七人、ながし雛
 比奈子がアルバイトをしているのは、駅前にある喫茶店、「ハピネス」だ。カフェという雰囲気ではなくて、本当に喫茶店。

 カウンターではマスターがコーヒーや紅茶をいれていて、奥の厨房では簡単な料理を作ってくれる。
 
 ナポリタンとかミックスサンドとか。

 ケーキは、「マノン」のケーキが出てくるからすごくおいしいけれど、全体的になつかしい雰囲気の店だ。

 私も比奈子も昔からこの店によく来ていて、マスターとは顔見知りだ。

 入口の扉を開くと、カランコロンとベルが鳴る。

「あれ、志帆ちゃん、どうした?」

 ちょうどカウンターの中で洗い物をしていたマスターがこちらへと顔を向けた。

「……比奈子、ここにいたりしないよね?」

「今週は雛祭りに行くから休むって……雛祭りの時期はうちも忙しいんだけど、あとの週末全部出てくれるって言ってたからね」
< 8 / 31 >

この作品をシェア

pagetop