グッバイ・メロディー
⋆°。♬


毎年こうちゃんといっしょに行っている、地元の夏祭り。

せっかく新しい浴衣を買ったのに、今年はこうちゃん、どうしても行けないって。


ついでに、学校の夏期講習にも出席できないって。

自由参加のやつだから、それはべつに出なくても問題ないのだけど。


それでもわたしはこうちゃんと行く気マンマンだったから、週に2日、炎天下の学校までの道のりが、いつもの100倍くらい長い。


「ごめん、季沙」


しゅんとした顔、したいのはわたしのほうだ。


「1回も着てもらえないまま、タンスにしまわれるだけの浴衣がかわいそう」


べつにいいよ、しょうがないよね、
と言うつもりだった。

それなのに嫌味みたいなサイテーの言葉がとっさに出てきて、自分でもちょっと本当にびっくりした。


しまった、と思ったときにはもう遅かった。

傷ついたような目がふたつ、悲しく濡れてわたしを見つめている。


逃げるようにノートに目を落とし、講習の課題の続きに取り組もうとしてもぜんぜんダメ。

ぜんぜん、集中できない。

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