グッバイ・メロディー
⋆°。♬


今年は正真正銘の本命だよ、

と必死に念押しする姿を、この世のなによりも愛くるしく思う。


「といってもね、いつものガトーショコラなんだけどね!」


これまでのいつよりも照れくさそうな、嬉しそうな、それでいてどこか一生懸命な様子を見ていたら、この関係がたしかに変わったことをじわじわ実感して、どうしようもない愛おしさがこみ上がった。



ずっと、好きだった。


たぶん生まれたときから――もしかしたら季沙が生まれてくる前、俺のほうが先に生まれて、ひとりで季沙を待っていた半年間のうちから。

俺のほうはもう、すでに季沙を好きでいたんじゃないかと思う。


そんなファンタジーなことまで考えてしまえるのは、どこまで遡っても、彼女を好きな記憶にしかたどり着かないからだ。


たぶん俺は(はた)から見たら頭がおかしいほどに季沙を好きなんだろうけど、だからといって、なにがなんでも自分のものにしたい、なんていうふうに思ったことは一度もない。

いつまでたっても俺を異性として意識し始めない季沙に対して、苛ついたり、焦ったりしたことも特にない。


むしろ俺は、このままでいいとすら思っていた。

このままずっと俺の隣にいてくれるなら、正直なところ、その形はべつにどんなふうでもかまわなかった。

季沙がほかの誰かの元へ行ってしまう気もしていなかったし。


なんとなく一緒にいて、なんとなく変わらないでいて、なんとなく歳を重ねていくのかなって、なんとなくぼんやり思ったりして。


幼いころ一緒に遊んだおままごとの世界でずっと止まっていたのは、もしかしたら俺のほうだったのかもしれない。

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