あなたの恋を描かせて



「じゃあ、あたしと颯はこっちだから」


「またね、水無瀬さん」


「うん。また明日ね、ちなつちゃん。楠くんも」



手を振って、仲良く帰っていく二人を見送る。


しばらくすると自然に二人の手は繋がれて。



わ……手、繋いでる。


やっぱり二人は付き合ってるんだな。


わたしまで少しドキドキしてしまう。



「あ、城越くんもまたね」


「………」



あ、あれ?返事がない……


聞こえなかったのかな。



「名前……」


「名前?」



あ、楠くんは知っていたけど、城越くんにはわたしの名前言ってなかったっけ。



「わたし、水無瀬です。水無瀬 葵」


「そうじゃなくて、」


「……?」



きょとん、とするわたしに城越くんは少し笑った。



わ、ぁ……城越くんの笑顔、初めて見ちゃった。


どうしたんだろう……心臓がきゅんって音をたてた。


それにさっきとは比べ物にならないぐらいドキドキしてる。



ぼーっと城越くんを見ていると、家どこ?と聞かれてはっとなる。



「え、と家はここから歩いて三十分ぐらいのところで…」



わたしがちなつちゃんたちが行った方向とは逆を指さすと、城越くんはそっちに歩いていった。



「送ってく」


「えっ!?」



ドキッと心臓が音をたてた。



え、今、送るって……


さっきのちなつちゃんたちを思い出して少し顔が熱くなる。


じゃなくて!!


てっきり城越くんの家もこっちだと思ってたのに。


そんなに迷惑はかけられないよ!





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