あなたの恋を描かせて
「ち、ちなつちゃんはいいの?楠くんと食べなくて……」
「あたしまでいなくなったら葵が一人になるでしょ」
「そうだけど……」
でも、好きならいっしょにいたいとか思うんじゃないのかな。
だからいっしょにご飯食べたり、帰ったりするわけで。
わたしはまだ恋、とかしたことないから分からないけど……
ちなつちゃんに葵は気にしなくてもいい、と言われても、やっぱり気にしてしまう。
だって、せっかくの時間をわたしが潰しているんじゃないかと思うと……
ちなつちゃんにも楠くんにも申し訳ないよ。
しゅん、となるわたしにちなつちゃんは仕方ないなぁ、と笑う。
そのままケータイを取り出すと、いじり始めた。
メール、かな。
じっとその様子を見ていると、しばらくしてちなつちゃんは顔をあげた。
その顔はニヤリと笑みが浮かんでいて。
「明日のお昼は颯のところに行くわよ」
「……え?」
それは、ちなつちゃんと楠くんがいっしょにお昼を食べる、と解釈していいのかな。
「じゃあわたしは」
「もちろん」
「?」
「葵もいっしょにね」
ニコッと笑ったちなつちゃんの笑顔を、少しだけ怖いと感じた瞬間だった。