あなたの恋を描かせて



ついこぼれた二度目の"好き"は、絵ではなく、水無瀬さんに向けた言葉だった。


きっと、水無瀬さんは気づいていないだろうけど。



「じゃあ、またね」



赤崎さんの声にはっとすると、いつの間にか自分の教室についていた。


結構な間考えていたらしい。



「また帰りにね、ちなつ」


「うん」



笑顔で別れる二人に、少しだけ羨ましいと思ったのは言わないでおく。



「水無瀬さんも、またね」


「うん、またね楠くん」



そう言って俺を見ると、微かに頬を染めてふわり、と笑った。



「城越くんも、またね」


「、また……」



教室に向かう二人の背中をじっと見つめる。



「日向、何気に嬉しかっただろ」



ちょっとだけ赤いぜ?と言われて顔に手を当てる。


確かにちょっと熱いかもしれないが……そんなに分かりやすいか?


まぁ、普通なら気づかない程度だよ、と俺の心を読んだかのような颯に返す言葉がなくなる。


そんな俺を見て楽しそうに笑う颯に、なんだか弱味を握られたような、そんな気がした。



「そうだ、日向。俺から一つ提案があるんだけど」


「何?」


「ズバリ!今日の放課後遊びに行こうぜ!」



そういえば急な会議とかで部活がなくなったんだったな。


特に用事もないし、遊びに行ってもいいけど……


どうしようか迷っていると、颯がニヤリと笑った。



「もちろん、ちなつと水無瀬さんも誘ってさ!」


「………」



ぴたり、と止まる思考。


そんなことを言われたら



「……行くって言うしかないだろ」



ぽつり、と呟いたその返事に、颯は満足そうに笑った。







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