あなたの恋を描かせて




このまま寝転んでいると本当に寝てしまいそうだ。


さすがにそれは避けたい。


制服に皺つくし。



よっ、と起き上がったとき、ふと思い出したのは葵の好きだという人。



確か……城越、だったか?


葵がそう言ってた気がする。



そいつがオレを見る目は、明らかにオレに敵意を持っていて。


というか顔全体で言ってたな、あれは。


葵には見えてなかったみたいだけど。



「まぁ、気持ちは分かるけどな」



オレも同じ男なわけだし。



葵には言わなかったけど、多分、男と女じゃちょっと考え方が違うと思う。


つまり、男は相手を……好きな人を自分のモノにしたいという思いが強いわけで。


いわゆる、独占欲?



……抱きしめたいとか、キスしたいとか思うんだよな、うん。


まぁ、女の気持ちは分からないから、これはただの勘だけど。



それなのに。


今日、あいつの目の前でオレと親しげに手を繋いだりして。


葵は気にしてないと思うけど、あいつの立場から葵を見たら……



「明日の葵、本当に大丈夫か?」



自分のことよりそのことが気になって、本気で心配になってしまい、その夜はなかなか寝つけなかった。





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