優しい手で。
「.....だけどっ!.....じゃぁ、 何であの日バイトだって、 私に嘘ついたの...?」
「...........」
黙ったまま俯くヒロ。
「.....って...なに私あんたに聞いてんだろ…」
私は力なく笑った。
「......あの日...圭太は..」
「.........え...」
「....圭太は...あの日、 一緒にいたやつ...紗希って言うんだけど…紗希と一緒にいたっていうのは....」
私はその続きを息をするのも忘れて聞き入る。
「............」
それでもなかなか言わないヒロ。
「...早く..教えてよっ」
「.....その紗希はジュエリー店で働く姉がいて、そのジュエリー店に用があったんだ圭太は。」
そして、その後のヒロの言葉に私の瞳から涙がでた。
「.......お前への婚約指輪を買うために.......」
「....ぅ.....そ......」
「.....あいつ、 言ってた。『るいと結婚して、俺とるいの子供と幸せで温かい家族をつくりたい。』って。」
「.....圭ちゃん....が.....?」
「.....ぁあ。それに...紗希にも同じ大学の、ろくでもない奴だけど…..一応、彼氏いたしな...。それで、圭太はその紗希に頼んでそれを用意してもらってて.....」
「......ぅそ.....そんなっ.......」
「....お前、誕生日12月25日だろ...?
だから圭太は....25日にお前に渡すために......」
そう言われて私は初めて気が付いた。
__12月25日は私の誕生日だった。
あの家、 あの両親といるうちに
私は誕生日なんて忘れていた。
自分は生きている意味のない価値のない人と
自分は産まれてくるべき人じゃなかったと
.....そう思っていたから。
でも、いまさらあることに気付く
「じゃあ.....圭ちゃんはその紗希さんに頼んで、一緒に私への指輪を買うために…あの日....」
「..........ぁあ。」
「.....じゃぁ..圭ちゃんは私のせいで…死んじゃったの」
「..っ!?.....そんなわけねぇだろ!」
そう言う私に、怒鳴るヒロ。
「...だって私へのために行って...圭ちゃんは事故にあった!......私のせいで......私のせいで圭ちゃんは......私のせいっ......圭ちゃんっ...ごめんね....ごめんねっ....」
私は顔を手で覆って壊れたかのように、
そんな言葉を繰り返す。
ヒロはそんな私を抱き締めた。
「...やめろっ....お前のせいなんかじゃねぇよ。」
「....でも...でもっ....私、最低だ.....」
「......ぇ......」
「...私あの日、圭ちゃんが他の女の人といたって知って......だけど、きっと、なんか理由があったって頭ではそう思っても.....心がついていかなくて...。
.....どこかで信じてない....私がいた。圭ちゃんに怒りさえも覚えた....。」
「.......んなの...誰だってそぅ思っちまうだろ...」
「....でも....私.....。....圭ちゃんを信じてなかった....圭ちゃんは....どんな時も私を信じてくれたのにっ...」
「...ルイ...圭太はそんなことで怒る奴じゃないだろ?」
そう優しいヒロの声が聞こえる。
「........ぅっ....ん....」
「......だから....これ以上自分を責めるな…..」
そう言ってヒロは温かい優しい手で、
私の頭を撫で続けてくれた。
そのうち私の意識は途切れてしまった。