シオン【完結】


――――――…久美。


洗面台に手をつけ、濡れた顔のまま俺は俯く。



――――――……久美。


今度は、俺から涙が溢れて来る。



「……っ」



久美が愛しい、そんな感情も共に戻って来て。



言い様のない苦しさが俺を包んだ。

そして、ぽつりと呟く。


「……どうして」


俺はあの時、久美を呼び止めたんだ。
久美が何故死ななければならなかったんだ。



後悔。
罪悪感。
喪失感。


その全てで打ちひしがれる俺の背中からふいに、声がかかる。


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