博士と秘書のやさしい恋の始め方
そういえば――前にもこんな夜があったっけ。

あの日も今日と同じ金曜日で、こうして先生が下まで送ってくれた。

先生が仕事中の実験室にお邪魔して、先生に白衣を貸してもらって写真まで撮らせたりして。

いつもと違う先生に出会えた気がして、すごく嬉しくて楽しくて。

だから、なんだかちょっと別れがたくて。

そう、あの夜も同じように後ろ髪ひかれる思いで門へ向かって歩き出したんだ。

それで、歩き出したんだけどやっぱり気になって――。

私は立ち止まった、あの夜のように。

ここを曲がればもう先生がいる3号棟は見えなくなる。

私は半信半疑の期待ではなく、確信を持って振り返った。

「(やっぱり……!)」

遠目だけれどはっきりとわかった。

白衣のポケットに手を突っ込んだ先生の姿が。

あの日のように私が両手を大きくふると、先生は会釈するようにして大きく頷いた。

心なしかちょっと笑っているような気がしたのだけど、さすがに表情まではわからない。

そうして私はいっそうあたたかい気持ちで心を満たして歩き始めた。

先生もきっと、安心して仕事に戻ったのではないかと思う。

日曜日、先生と会える。

ふたりで一緒にすごすために先生が迎えにきてくれる。

私はもう今から、さらわれる気(?)まんまんで。

思わずにやけそうになる顔を気にしながら、ひとり家路を急いだ。

明日の土曜日は美緒の結婚式。

先生のお誘いが明日でなくて明後日で、すごくラッキーだったと思う。

神様っているんもんだなぁ、なんて。

こんなときばかり思う私ってやっぱりちょっと現金でばちあたりかも?

明日はちょうど神社へ行くし(美緒のお式は神前なので)、帰りにお参りしてこよう……。

今夜は早く眠らなきゃ。

その前に――ホタテのカルパッチョをいただかなくちゃっ。














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