博士と秘書のやさしい恋の始め方
本当にもういちいち全部、三角さんの言うとおり。

うんうんと深く頷く私を見て、三角さんは意味深に笑った。

「今さらだけど、田中先生ってなかなかのイイ男よね」

「えっ」

「違う? それともやっぱり、顔はよくても無愛想で偏屈なだけ?」

さすがは仕事のできる三角さん……。

まんまと策士にはめられた気がするのは、私の思いすごしではないはず。

「それは……」

「うん?」

「イイ男だと思いますよ、とっても」

研究者として尊敬しているとか、職場の仲間として信頼しているとか、もう何を言っても誤魔化しようがないと思った。

私は好きなのだ、田中先生のことが。

傍目にもわかるほどに、田中先生を好きになってしまったのだ。

けど……そんなにバレバレなの?

勘の鋭い三角さんだけ??

それとも、皆がうすうす勘づいているとか???

まさかまさか……田中先生本人までも!?

「あのっ、三角さん」

「モッチーが言ってたのとはぜんぜん違う?」

「えっ」

「田中先生の悪口、いろいろ吹きまれていたんでしょ?」

「ええっ」

び、びっくりした。三角さんてばもう、どこまでもお見通しなのだから。

「モッチーはね、田中先生のことが好きだったのよ」

「えええっ」

な、なんですとっ!?
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