不機嫌な彼のカミナリ注意報
「笹岡! B地区の市場調査はどうした?」

「今から行ってきます」

「無駄なこと喋ってないで、さっさと行ってこいよ!」

 笹岡さんの正面のデスクに座る風見さんから私たちの会話を遮る声が飛んできて、そこで会話は見事に中断してしまった。

 笹岡さんは書類を鞄につめ、私にだけわかるようにペロっとお茶目に舌を出してそそくさと外出した。

 総務の“なんでも屋”のこと……もっとくわしく聞きたかったのに。


 この日は結局、私は風見さんに次から次へと仕事を言い渡されて一日が終わった。
 本当に容赦がなく、目まぐるしくて死にそうになった。

 しかし風見さんは風見さんで、打ち合わせなんかでデスクに居ない時もあり、終始見張られているわけではなかったから、落ち着いてしっかりやれたと思う。

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