不機嫌な彼のカミナリ注意報
「いいか、よく聞け。浮気する男は世の中にゴマンといるかもしれないが、お前が付き合ったその男は稀だ」

 言い方はぶっきらぼうなのに、風見さんの声がすごくやさしいから困る。
 それまで堪えていた涙が、とめどなく決壊してしまう。

「泣くなよ」

「……っ……」

「そんな男のために泣くな」

 違う。風見さんは勘違いしている。

 これは斗夜のために流してる涙ではない。
 そんなものは一年前にとっくに流し終えた。

 今は、風見さんがやさしいから泣けてくるのだ。


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