不機嫌な彼のカミナリ注意報
 奢る、という部分を耳ざとく聞きつけたのか、笹岡さんがまるで仔犬のように目をキラキラさせて身を乗り出していた。

「え、それはダメ。私は緒川さんと“相思相愛”になりたいんだから邪魔しないで」

「おい! 瀬戸!」

 和気藹々と話している場に、突然斜め前から風見さんの大きな声が飛んでくる。

 ……声が、怒っている。
 でもどうしてだろう。しかも瀬戸さんに対して怒っているみたいだ。

「私が緒川さんと飲みに行ったら悪いの?」

「じゃあ、その下心引っ込めてから誘えよ。この間の俺との話は無視か?」

 風見さんがどんどん不機嫌になっていく。
 だけどそれに比例するように、瀬戸さんがニヤニヤしていくのがわかった。

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