不機嫌な彼のカミナリ注意報
 すっかり忘れていた。
 私も言われていたのだ――― その言葉を。

「風見くんなりの、一種の“予防線”なんだろうけどね」

 瀬戸さんの声がしだいに小さくなって聞こえなくなっていく。

 頭を鈍器で殴られたみたいな衝撃だ。
 ボーっとして、何も考えられない。

「そんなこと言われたって、好きになるときにはなっちゃうのに。……ね? 緒川さん!」

 意味ありげにそう紡がれた言葉も、ショックを受けた私の耳を容易に通過していく。

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