不機嫌な彼のカミナリ注意報
「なに見てるんだ」

 頭の中で妄想を繰り広げていたら、風見さんにそう言われてハッと我に返った。

「い、いえ……べ、別に」

 咄嗟に返事をしようとすると、どうしてこんなに噛んでしまうのだろう。

「俺が仕事を言い渡して、初日からこんなにこなしたヤツはお前が初めてだ」

「……え?」

「普通のヤツはもっと遅いしミスもある。だけどお前は、見る限りミスがなかった。しかも要領がいい」

 私の中では普通に仕事をしたまでだったけれど、そう言ってもらえるのはうれしい。

「どうだ? 今日、つらかったか?」

 それは……先輩として労ってくれているのだろうか…。
 だとしたら、思ったよりも良い人かもしれない。



< 28 / 328 >

この作品をシェア

pagetop