不機嫌な彼のカミナリ注意報
「おはようございます! 緒川さん!」

 昨夜のことを考えてボーっとしていた私に、突如後ろから元気な挨拶が聞こえて振り返ると、エレベーターから降り立った松本さんが声をかけてくれていた。

「松本さん、おはよう」

「どうしたんですか? こんなところで立ち止まって……なにを見てたんですか?」

「なにって……」

 視線を元に戻すと、もうそこに風見さんと笹岡さんの姿はなかった。オフィスに入ったのだろう。

 だけど……なにを見ていたのかと聞かれたとき、一番に頭に浮かんだのは風見さんだった。
 失礼かもしれないけれど、笹岡さんの存在は微塵も出てこなかった。

 これはいったいどういうことなのかと自問自答する。

 ……いや、違う。絶対に違うと思う。
 頭をふるふると振り、今自分の頭によぎった思考を振り払った。

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