鈴姫伝説



艶が謝ることなんて、ない!






「でも……あなたのおかげで……記憶を、取り戻せたの……嬉しかった。





昔の私を覚えていてくれたって、言ってくれたでしょう?





そのとき、全てを……思い出したの……」






艶は涙を浮かべて、笑った。





あたしは、その艶を儚くも、とてもキレイだと思った。





「すずか……」





艶の声は、もう小さく、かすれてしまって、ほとんど聞こえない。





あたしは艶の口もとに耳を近づけた。







「あなたなら、ぜっ……たい、できる。





あなたなら、みんなを幸せにできる……。





忘れないで……私は……」





「ッッ!」






あたしは再び、艶の顔を見る。




彼女は少し口角を上げて、笑った。





そしてわずかに唇を動かす。





更に涙があふれて、視界がぼやけた。





うん、あたしもだよ……艶……。






そのとき、腕の中で、艶の力が抜けた。







「つや……?




艶! イヤッ! そんな、艶あぁあ!!」






なんで、なんで、なんでぇっっ!!





周りなんて気にせず、あたしは艶を抱き締め、泣き叫んだ。






< 399 / 511 >

この作品をシェア

pagetop