好きより、もっと。



三年。

そんなに長くなるのか。



俺たちが一緒にいた時間よりも、離れる時間の方が長くなるなんて。

あんまりな辞令だな。



しかも、かなり急な案件だ。

赴任は下期の始まる十月一日から。

あと一ヶ月半しかない。

今の業務の引き継ぎと、物件探しにも行って来ないとな。

それと、出向先への挨拶だ。


一ヶ月半でそれら全てをしようと思うと、目眩がしそうだった。




「アミ、なんて言うかな」




アミは想ったことがすぐ顔に出る。

だから、口では『寂しくない』と言いながら、目が『寂しい』と言っている。

アレでなんともないフリをしてるなんて。

想い出しただけで笑いが込み上げてくる。

自分の顔が、優しく緩むのがわかる。




俺のこんな顔を見たら、カズも未央も信じられないという顔をする。

そういうことを、アミも自覚してくれたらいいのに。




「三年、も待たせる訳にはいかねぇよな。でも、アミ・・・着いて来てくれんのかな」




仕事バカのアミは、俺と一緒にいても仕事に向かってしまうほど。

それは責任感の表れで、そんなアミを心底尊敬してる。


俺から離れる時の寂しそうで仕事に行きたくない、という目とは裏腹に、凛とした声で『仕事に行かなくちゃ』というアミ。

そのアンバランスさが、俺の寂しさを余計掻き立てるんだ。



離したくない、と想った時には勝手に腕に力が入っていて。

それに抗うことなく、胸に抱かれるアミ。

背中に回された手に力が入る度、もっと、と想うのは俺の方だ。



顔を上げて、俺のおでこ、目、頬、口の順にキスをして。

目を合わせてもう一度キスをする、その照れたような顔も。




当分見れないのか。


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