好きより、もっと。

冷たい人




「で、話ってなに?」




タバコを灰皿に押しつけながら、タクの方へ向き直る。

なんだか、タクの周りの空気がいつもと違う気がして少し緊張してしまう。



目の前のグラスに残ったビールはわずか。

タクのグラスは、茶色のウイスキーがなみなみと注がれている。

平日なのにウイスキー飲むなんて、珍しいな。




なんだか手持ち無沙汰で、目の前のビールを喉に流し込んだ。



この席はカウンターの目の前で、少しだけ位置が高い。

だから、カウンターにいるカズさんやセリトさんには私のグラスが空になったのがすぐ見える。

遠くから『同じでいいかー?』という声が聞こえたので、腕でマルを作って返事をした。




視線をタクに向けると真っ直ぐに私を見つめていて。

その目があまりに真剣なので、私は息が出来なくなるんじゃないか、と想った。




暗いこの店の中では、よりいっそう造り物のように綺麗なタクの顔。

それが、何故か今は怖かった。



何となく煙草に手を伸ばす。

その左手を、タクの右手が掴んだ。



見た目よりもずっと男らしい、綺麗な手で。


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