初恋Daysーあの場所で、また逢えたなら

「華だよ」



即答すぎて、頭の中が一瞬、真っ白になった。



いま何ていったの?



「え?あの……え?」



“成の初恋ってさ……”あたしそう間違えて聞いちゃったよね?



「俺の初恋っしょ?華だよ」



え?ちょっと待って……。



成の初恋があたし?ウソでしょ?



さすがに動揺するよ、あたし。



「ふっ……なに驚いてんだよぉ。ちゃんとプロポーズしただろ?昔。あれももう10年以上も前なのか……」



プロポーズ……?10年以上も前……?



「もしかして、タンポポ……?」



「そうそうっ!原っぱに咲いてたタンポポ取って、“ボクのお嫁さんになってー”って華に渡してさ。色羽とふたりで華にプロポーズしたっけ」



「あの時のこと……まだ覚えてたの?」



「だって俺の初恋だしなっ」



成の笑顔に胸がぎゅってなる。



あの時のことなんて、成はとっくに忘れてるって思ってた。



こんな小さなことでも、すごくうれしくなってる自分がいる。



バカみたい。あたし。



いま、成は砂歩と付き合ってるのに。



胸がぎゅってなるたびに砂歩の顔も浮かぶ。



「あれ幼稚園の時だよねぇ?」



「マセてたって?ほっとけ」



成の初恋はあたしだったの?



あれから成は、いつまであたしを好きでいてくれたの……?



そんなバカみたいなこと考えちゃう自分がいる。



「まぁ、あのとき華にフラれたしなぁ。“華はパパと結婚する~”って。いま思い出すとクソ可愛いな」



「フラれたって……あたしそんなつもりじゃ……」



なにあたしムキになってんだろ。



「ハハッ……懐かしいなぁ~」



そんな遠い昔のことを後悔したって、どうにもならない。



あたしはきっと、成に彼女が出来るまでは、自分の本当の気持ちに気づかなかっただろうから。



17歳になって、やっと自分の初恋に気づくなんて。



あたしって本当、自分でも呆れるくらい鈍感だわ。
< 100 / 328 >

この作品をシェア

pagetop