君がいたから
 真己が店を継ごうと決心した理由は、「好きだから」らしい。酔っ払ったオヤジが多くても、仕込み作業がきつくても好きなのだと。

「疲れた顔して入ってきたオヤジさんたちが、料理食べて酒飲んで、たまに愚痴言ったりしてさ、それでも最後は元気になって帰る姿見たら、俺も頑張ろうって気になるんだ。自分の作ったもので喜んでもらえるのは、やっぱ嬉しいもんな」

 本当に嬉しそうに語る真己の顔を見て、共感した私は大きく頷く。

「わかるなぁ、それ。何かさ、お互いに分け与えてる部分があると思うんだよね。私たちはおいしい食事で、お客さんは感謝の気持ちっていうのかな。暖かい気持ちを伝え合ってるって気がする」
「お、話がわかるね、菜々子さん。どう?俺とずっと一緒にこの店を切り盛りしていかないか?」
「クビにされない限り、喜んで」

 冗談ぽく言っていたし、この後は談笑して終わってしまった会話だ。
 最後の言葉は、受け取りようによって告白にも聞こえる。でも私は、ただ意気投合した二人の会話にしか聞こえなかった。

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