俺様王子と2℃の恋
「俺の彼女になってほしい。
 もちろん、フリだけでいい。

 デートもしない、一緒に帰るなんて面倒なこともしなくていい。
 ただ――
 王宮樹の彼女かと問われれば、“はい”と言って。それだけだ」

 お願い、というより命令するような口調。

 当然腹が立ったけど、でもこれは恩返しなのだ。何でもすると言ってしまった手前、受けなくちゃいけない。

「――分かりました。や、やります」

「あぁ」

 ありがとうとも言わない。
 よろしくとも言わない。

 けど、今まで無表情だった彼の顔に、少しだけ笑みが浮かんだ。
 それは嬉しいとか面白いとか、そう言った感情ではなくて。

『安堵』

 この一思いに尽きるような、そんな笑みだった。
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