可愛いなんてバカらしい
屋上のドアノブは錆びかかっていた。


古い校舎なので薄暗い。


「ん?鍵がかかっているな。」


熊田は鍵をカチャカチャするが、ドアが開かない。


「中から鍵がかかっているのか?」


「不良らが閉めたんじゃねぇの?」


その時、



ガタッ....ダンッ.......!



何かを押さえるような音がした。


「誰かいるのか?開けろ!いったい何をしてるんだ!」


熊田がドアをドンッと叩いた。


「んーんー!...!」


中から女の声がする。


これは.......ちょっとやばいかもな。


「熊田!ドア無理やりでも開けろ!」


「!?学校の物は壊してはいけない!それに僕にそんな力はない!」


「てめぇ、男じゃねぇのかよ!!....俺が蹴破るから離れてろ!」


「やめろ!女にそんな力はないだろう!?怪我するぞ!!!!」


「んなこと言ってる場合じゃねぇだろー.....が!!!!!!」


ドアを蹴破り屋上に足を踏み入れる。


中には数名の男と生徒と思われる女が一人。


男は数名で女を囲み、女は口をガムテープで塞がれていて、手と足を紐で拘束されていた。


「.......てめぇら、ここで何してんだ?ものによっては、てめぇらを殴る。」


不良らはガンを飛ばしながら真琴と熊田に近づいてくる。


「あぁ?おめぇらこそ誰だよ?今、いいとこなんすけどぉ~。」


不良は真琴に殴りかかろうとして、拳を大きくふりかぶった。


しかし、真琴は目の前に現れた拳を手で受けとめ不良をかわした。


「俺が本気になる前にてめぇら名前名乗ってそこに座れ。」


腕を組んで、堂々とした姿で不良らに言う。


「おい、沢谷!暴力はいけない。」


熊田が冷静に言う。


「へいへい。じゃ、君たち。名前名乗ってくれるかな?」


不良らにニッコリと笑い近づく。


「あ、まず女の子を解放してもらおうか。」


女の子に近づこうとするが、先を阻まれる。


すると、奥にいた男が前に出てきて、鬼のような顔で真琴に近づいてきた。


「.....てめぇ調子乗ってんじゃねぇよ。俺が誰か知らねぇだろ?教えてやるよ。」


男は真琴に大きくふりかぶって殴ろうとする。


「はぁ、てめぇが誰だか知らねぇけど、俺のこと.........殴るんだ?」


殺気を放って、目だけで相手を殺す。


男は一瞬、拳の力を抜いたように見えたがそれでも腕を下ろすことはない。


「で、名前教えてくれんだろ?言えよ。」


静かに男に名前を尋ねる。


「俺はなぁ、この学校で"2番目"に恐れられている"遠蛇 矢一"だ!」


2番目か。


「遠蛇矢一.....。知らねぇな。ちなみに1番目って誰なんだ?」


なんとなく、検討はつくけど、まぁ、一応確かめとくか。


「1番目は沢谷真琴に決まってるだろ!?てめぇ、そんなことも知らねぇのかよ!」


やっぱりな。


でも、俺って本当に1番だったんだ。


男は拳を真琴にすごいスピードと強さで近づけた。


しかし、それを手で受けとめ、男に怪しい笑みを浮かべ耳のそばで言った。


「ちなみに俺の名前は沢谷真琴だぜ?」


それを聞いた瞬間の男の顔は今でも笑えるくらい青ざめていた。


「じゃ、みんな名前名乗ってくれるかな?」


ニッコリと笑い、メモに数名の名前を書いていく。


「熊田、こいつらどうすんだ?」


女の子をそばで守っていた熊田にこの後の処理を軽い感じに尋ねる。


「反省文を50ページ。
女子生徒への謝罪及び反省。
トイレ掃除1ヶ月。
東館の出入りに禁止。
そして、一週間の停学。以上だ。」


熊田は気絶している女子生徒を抱え、屋上の出口に向かう。


「沢谷行くぞ。僕たちの仕事はすでに終わっている。ここに長居する必要はない。」


熊田はそういって屋上を出ていった。


真琴も熊田のあとに続く。


生徒会長の頼み事は完了したし、一件落着。


「はぁ、疲れたぁ。」


思い切り伸びをして、夕日に照らされた校舎をボーッと眺めていた。


すると、今まで沈黙を守っていた熊田が急に口を開いた。


「お前、男なのか?」


そりゃ、バレるよな。


あんだけ、男をオープンしちまったら。


「あぁ、そうだよ。何か問題でも?」


あくまでも冷静にいよう。



「.......普通なら女装は校則違反だが、今回に免じて黙っておいてやる。」


熊田はそっぽを向いて足早に先を歩いた。


「じゃ、今度おごれよ~」


熊田はびっくりしたような顔をして「今度な」と微笑みながらいった。
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