Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編



ここからは、誰の助けも借りられない。一人での戦いとなる。


一分の隙もないようにダークネイビーのダークスーツを着、髪は専属のスタイリストに時間を掛けて仕上げてもらった。足元の靴は特注品。


戦いの場であるここで鎧となる装いは完璧にしなければならない。


アルベルトはドア向こうで控え、私は一人で会見会場へと入る。大丈夫、全ては頭の中にある。あらゆる質問に対応できるよう、徹底的にシミュレートした。


ゆったりとした歩みで壇上に向かう最中、控えめにシャッターを切る音がそこかしこから聞こえる。


私が会見用の席に着くと、記者団が立ち上がり一礼する。略装だがスーツを着用した一団からは、咳払い程度しか聞こえない。 もともとこういった場で私語をする者はほとんど居ないが、今は緊張感が張り巡らされているのを感じる。


記者団の代表が定例会見に関する口上を述べ、それに笑顔で応じる。進行役の宮内庁の職員が脇に控えているが、おそらく彼の胃を痛めることになるだろう。


生真面目そうな彼には申し訳ないが、これは必要なこと。


代表質問が始まる前、私はチラッと職員に目配せする。眼鏡をかけた職員は、少しだけ顔を青くしながらも必要なことを伝えてくれた。


『これより代表質問に入りますが、その前にカイ親王殿下より皆様へお伝えしたいことがございます。どうぞご静粛にお願いいたします』


遂に、来た。


暴れだしそうになる心臓を宥めながら、表面上は平静を装い口を開いた。


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