Schneehase~雪うさぎ 身代わり王子にご用心番外編



夢の中は天国でした。


ようやく桃花と暮らせるというのに、禁欲し過ぎていたせいもあると思う。彼女が自らこちらの胸に飛び込んできて、後はもうえもいわれぬ幸福な時間。


まさか妄想がそのまま夢にもなるなんて。幸せ過ぎて鼻血が出た。


オマケに青少年には話せないような濃密な大人のお時間だったから、朝起きた時は愕然とした。しっかり朝の……男の悲しい現象が起きてる!


愕然として思わずドイツ語で己を罵ってしまったが、すぐに部屋にある気配に気付いてギョッとした。誰かが部屋に入ってる。


桂木なんて他人の部屋に入るタイプじゃないし、藤沢もちゃんと許可が無ければ……と思うが。もしやそれが桃花とは考えもしなかった。非情な現実に焦るというより猛烈な羞恥心に、ぶっきらぼうな対応しかできない。


広げたままの雑誌を拾っているのは、片付けということだろう。それだけで鼻血ものだが、こちらは裸で寝てる上に言えない朝の現象中だ。そのまま見られたら確実に変態認定される! それだけは避けねば。


というわけで。せっかくの2人きりの時間は、散々なものだった。桃花の朝ごはんという幸せタイムも泣く泣く諦めなきゃならなかったし。


つくづく自分がヘタレ過ぎて泣けてくる。


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