生意気な年下の彼
「…先輩、顔赤いね」
「え?あ、いや、色々想像しちゃって──ていうか、和真くん、できるんだね」
 
 顔を隠すように両手を頬にあて、独り言のように呟く。
 そして数秒の後、遠慮がちに問いかけた。
 
「でも、実際できないよね?」
 
(それ、やれっていうフリ?)心の中でツッコミながらも和真はきっぱりと答える。
 
「できるよ」
「えー…できないよ」
「できるって」
「できないよ」
 
 まるで子供のケンカのように繰り返される可否の言葉。
 それに終止符を打ったのは和真だった。
 
 彼は一瞬真剣な眼差しを向けたかと思うと、彼女が抵抗する猶予も与えずに唇をふさいだ──自らのそれで。
 
「だからできるって言っただろ?」
 
 どこか勝ち誇った顔をしながら和真は言う。
 その言葉にも、突然の行動にも驚いた絵梨は、耳まで赤くしながら口を押さえた。
 
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