空との距離
虚空
AOI side...



いつも通りの朝。
いつも通りの道。
いつも通りの学校。

昔から……それこそ私が3歳とか、そのくらいだった頃からよく言われたこと。
『子供らしくないわね。無機質すぎない?』
何か思うわけでも、傷つくわけでもないけど……そっか、私ってそうなんだ。
まぁ、言われても無理はない。事実、私は感情の起伏がほとんどないし、感情を示したりだとか、そんなことも苦手。ゆえに表情だってうまく作れない。

「……まぁ、特別 困ることもないしね」
「あ~おいっ。何が困らないのぉ?」
「びっくりした……。驚かさないでよ、萌」
「え~。びっくりしたようには見えないよぉ~」
宇佐美 萌(うさみもえ)。高校に入り、同じクラスになったことから親しくなった友達。猫のような性格で、彼女は感情を出さないというよりは、わかりにくいといった感じ。
同じようなタイプだからか、一番仲がいい。
といったように、友達だっていればクラスから浮くこともない。
困ることなんてないのだ。

......だからなのかもしれないな。最近、ひどく日常がつまらなく感じてきたのだ。
高校に入る前は、実は少し胸を弾ませていたりした。
でも、入ってしまえば慣れるのも早いもので。
難しそうに感じていた授業も、回を重ねることで難なく理解できた。顔も名前も知らなかった人たちも、一月もすればある程度 接点ができた。キラキラしていた校舎も、じっくり眺めれば中学と大差ない。
たまらなく、つまらない。


あ。でも......

1つだけ、気に入っているものがある。
色褪せた日常の中でも、ひときわ輝いているものが。
「きれいだなぁ......」
青く澄みわたり、真っ白な雲をあそばせる、空だ。幼い頃から、これだけは執着をみせていたと聞いている。快晴だったり、雨だったり......きっと私は、コロコロと表情を変える空に憧れのような感情を抱いていたんだろう。
でも、届くことはない。
手を伸ばしても、背伸びしても、ジャンプしても、届くことはないのだ。
「もどかしい」
そんな独り言は、空にとけて消えていった。
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